るように思える

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るように思える


思いの外寒くて、電車の座席の温かさが心地よい。眠くなって読みかけの本から目を上げると、3メートルほど離れたところにあるドアのすぐ横の席に、顔に紫色の大きな痣のある大柄な中年女性が座っているのが目に入った。誰よりもしゃんと背筋を伸ばして正面を見ている口元が、つんと尖って何かを主張しているように思える。

電車がターミナル駅に停まりたくさんの人が降りた。乗り換えのアナウンスがいくつも流れているのを、このまままっすぐだから関係ないわと決め込んでそのまま座っていると、件の女性が席を立ってこちらに歩いてきた。目が合うと、ぱっちりと目を見開いて何か言いたげな不思議そうな、でも親しげな顔をするから、わたしもほんの少し首をかしげてしまう。

なんだろう……。

そう思っている間に、わたしの前を通り過ぎたその人は、少し先に座っていた男性に声をかけていた。正直言って一瞬、関わらずに済んでよかったなあと思ってしまったのだが、男性が「え?」と聞き返したので何を言ってるんだろうと聞き耳をたてたらなんと、「終点ですよ、終点」と教えてあげているではないの!

なんですとー?

この電車はこの駅止まりだったと気づいて慌てて降りたとたん、「降車終わりました」というアナウンスがあり、背後でドアがしまった。
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